昨年、国内で亡くなった日本人の数は156万人余りとなり、過去最多となりました。このような中で、火葬がすぐに行われない「火葬待ち」が長期化するケースが増えています。
火葬待ちが長引けば、ご遺体の安置に必要な費用が増加し、ご遺族を悩ませます。
遺族が直面している状況をもとに、私たちはどう準備して、「火葬待ち」にいかに対処すれば良いのかその方法を考えます。
火葬待ちの現状
火葬待ちが起きる原因は?
高齢化社会は多死社会でもあるということが現実となっています。亡くなる人の数に対して火葬場の数が追いついていないのです。
特に都市部では、流入人口の増加や死亡者数の増加が火葬待ち問題を引き起こしています。
首都圏では、火葬待ち時間が当たり前となっており、4〜5日待ちが一般的です。時には約一週間、最長で11日も待つこともあるようです。
NHKで神奈川県の火葬待ちのケースが紹介されています。
昨年厚労省の資料によれば、1都3県での死亡者数は1日平均1075人であり、火葬場の数は98施設です。明らかに火葬場の数が追いついていないことがこの記事からも分かります。
特に首都圏の問題が深刻
首都圏では火葬場の数が火葬待ちの人数に比べて明らかに少ない状況なのには理由があります。
第一に都市部では、人口の流入・増加が葬儀場の収容能力を超えているためです。
この問題の背景には、都市部の古い火葬場の設備の問題もあります。古い火葬場では、炉はあるものの、お別れや収骨をするためのスペースが不十分であるため、同時に複数の火葬を行うことができないのです。
第二に都市部でも高齢化が進んでいるため、相対的に死亡者数も増加しています。これにより、火葬待ちの人数がさらに増えてしまうのです。
火葬場増設の必要性
火葬待ち問題を解決するためには、火葬場の増設が必要不可欠です。特に首都圏では、古い火葬場の改修や建設を進めるべきです。
また、火葬場の効率化も重要です。現代的な設備やスペースを備えた新しい火葬場の建設により、同時に多くの火葬を行うことができます。
しかし、現実には土地の確保が困難、住民の反対が根強い、地方自治代の財政困難などの理由から、遅々として進まないのは残念なことです。
火葬待ちに遺族が取れる対策は?
遺族としてはなるべく早く葬ってあげたいのに、何日も葬儀場や火葬場の予約が取れない状況は遺族にとってとても辛いものです。
長期になればなるほど、遺体に傷みが出てきます。夏場の猛暑の時期であればなおさらですし、費用も甚大です。
少しでも順番を早くしてもらえるにする対策はあるのでしょうか?
火葬を待っている間にも費用がかかる
火葬待ちの間、遺体の安置に場所代とドライアイス代として、1日何万円もかかり、長期になればなるほど負担が増えます。
また、ドライアイスを使わずに、消毒や保存処理をするエンバーミングを施してご遺体を保存する、という手段もありますが、30万円ほどの費用がかかります。
少しでも順番を早くしてもらえるにする対策
火葬待ちが問題になっている現状で、少しでも順番を早くする方法はあるのでしょうか?
対策として3つの方法を紹介します。
友引の日を選ぶ
最近は火葬場も需要のひっ迫を解消するために、友引の日でも火葬をするようになっています。
仏滅や友引など、もともとは陰陽道や民間信仰から出たもので、仏教とは関係ありませんし科学的根拠もありません。
家族葬や直葬であれば、遺族が友引であることを気にしなければ全く問題ないものです。葬儀場に空きがあるなら、友引の日を選ぶのもありかと思います。
時間帯を選ぶ
火葬場は葬儀との関係で12時ごろに予約が集中しやすくなっています。
そこで、午前中の早い時間など施設の比較的空いた時間帯を選べば予約が取れやすいということがあります。
生前の準備
葬儀の内容を検討している時間が長いと、予約も遅れてしまいます
そこで、生前の準備と葬儀のプランを決めておけばいざという時、葬儀までの流れがスムーズで火葬の予約も早めにすることができます。
そのほかにも、生前に葬儀社と葬儀プランを決めておくことにはいくつかのメリットがあります。
1. 遺族の負担軽減: 生前に葬儀のプランを決めておくことで、葬儀の計画を立てる必要がなくなります。これにより、遺族の負担が軽減されます。
2. 遺志の尊重: 生前に葬儀プランを決めておけば、自分の遺志や希望を尊重した形で葬儀を行うことができます。
3. 費用のコントロール: 生前に葬儀プランを決めることで、葬儀の予算や費用についての計画を立てることができます。予期せぬ負担を回避することができます。
今後、高齢化がさらに進むことで、家族だけでは亡くなる人を支えることができなくなるでしょう。そうすると当然、増え続ける死者を誰が弔うのかという問題が生じます。
人生の締めくくり方や、亡くなった後に誰に知らせるかについて家族で話し合っておくこと。また、元気なうちに自分の意思を託せる近くの人や友人とのつながりを持つことが重要だと考えられます。
そいった意味であらかじめ、自身の葬儀プランを考えておくのはとても良い考えです。それには、信頼できる専門家を交えて葬儀プランを練ることが重要です。
ご遺体をどこに安置しておくのか
「火葬待ち」が長期化するケースが増えれば、それに伴って、ご遺体をどこに安置しておくかも問題になります。
安置場所それぞれのメリット、デメリットを解説します。
自宅に安置
大切な方が亡くなった場合、自宅での安置ができるかどうか気になる方もいらっしゃるかもしれません。実際には、自宅に安置することも可能ですが、その場合にはいくつかの条件があります。
まず、遺体を自宅に保管する場合は、家族や近しい人が遺体の確認や管理をしっかりと行う必要があります。また、自宅に対して十分なスペースが確保されていることも重要です。遺体を安置するスペースが不十分だと、遺体を損傷させるおそれがありますので、注意が必要です。
自宅での安置のメリットは、家族や親しい人と共に静かに過ごすことができることです。また、自宅ならば、身近な空間で故人を偲ぶことも可能です。
一方で、デメリットとしては、遺体の管理には責任が伴うこと。さらに、自宅に遺体があるということで、都市化した現代では人間関係が希薄なため、近所の人に与える心理的な負担も考えられます。
葬儀場に安置
葬儀場に遺体を安置する方法も一般的です。葬儀場では、遺体を適切に管理し、火葬時までしっかりと保管してくれます。
葬儀場での安置のメリットは、専門のスタッフが遺体の管理を行ってくれるため、安心感があります。また、葬儀場は故人を迎えるための設備も整っており、周囲の人々が故人を偲ぶことができる環境が整っています。
一方で、葬儀場に遺体を預けるとなると、費用がかかります。また、葬儀場は他の家族や遺族も利用する場所であるため、プライバシーの問題も考慮する必要があります。
遺体ホテル
近年、火葬が遅れるケースが増えていることから、遺体ホテルと呼ばれる施設が登場して話題になっていいます。
遺体ホテルでは、遺体を完璧に保管しつつ、火葬までの期間を待つことができます。
遺体ホテルのメリットは、遺体を専門の施設に預けることで、安全かつ衛生的に保管できる点です。また、遺体ホテルは24時間体制で運営されているため、遺体の管理に関しても安心です。
しかし、当たり前ですが遺体ホテルの利用には相当の費用がかかります。
以上が、ご遺体を安置する場所のメリットとデメリットです。選択する際には、それぞれの場所の特徴を理解して検討しましょう。大切な方の最期の場所を選ぶことは、遺族にとっての重要な決断です。遺族の気持ちやご遺体の状態を考慮し、適切な選択をすることが大切です。
注目のニュース
遺体安置用冷蔵庫が川崎市の冷蔵施設メーカーたつみ工業によって、開発されています。
2〜5℃の冷蔵庫で1〜2ヶ月ご遺体の保存が可能ということで、火葬ちが増えている関東を中心に全国からの設置依頼が増えているとのこと。
近い将来、このような装置を置く施設が増えて、遺族の火葬待ちに対する苦悩が軽減されることもあるのではないでしょうか。
たつみ工業のプレスリリース↓
火葬場不足は解消されるか
今後、都市部の火葬場不足の問題は解消されるのでしょうか。
残念ながら簡単ではないようです。
自治体の財政状況の悪化や住民感情の問題があるために火葬場の新設は難しいというのが現状だからです。
都市部における火葬場の建設が進まない理由
火葬場の建設が進まないのには、いくつかの要因があります。
まず第一に、都市の人口密度の増加によるスペースの制約があり、土地の確保がむずかしく、新たな火葬場を建設することが困難になりがちです。
さらに、周辺住民からの反対や環境への影響も建設の障害となっています。火葬場は煙や臭いを発生するため、周辺住民からの苦情や反対意見が出ることがあります。
また、死は忌まわしいものでこれに関連する施設は自分の身近にあって欲しくないという心理もあります。
これらの要素から、地元自治体や住民の承認を得るのは容易ではありません。
解決の方法は?
火葬待ち問題を解決するための現実的な解決策はいくつか考えられます。
まずは、既存の火葬場の効率化が挙げられます。火葬場の運営プロセスを改善、スペースの活用法の改善など、より効率的に火葬を行うことで待ち時間を短縮することが求められます。
また、火葬場の新設については、周辺住民や地元自治体との十分な調整が必要で、住民の理解を得るためには、火葬場の環境への影響を最小限に抑える対策を講じることが重要です。
さらに、都市部と地方の連携も重要です。都市部に火葬場を建設することが困難な場合、地方での火葬場の増設を検討することが有効です。
火葬待ち問題は人々の心の負担となるだけでなく、公衆衛生にも影響を及ぼす重要な問題です。
都市部における火葬場の建設が進まない理由を理解し、解決策を見つけることが求められています。
地元自治体や住民、関係団体との協力だけでなく、死は忌まわしいものだというわれわれの意識の改革も必要なようです。