彼岸の入りの2023年9月20日放送の、テレビ朝日の羽鳥慎一モーニングショーで「無縁墓」「墓じまい」「無縁遺骨」が取り上げられました。
テーマは「荒れ放題『無縁墓』全国市町村6割に存在」「『墓じまい』お金事情は?お彼岸に考える墓の悩み」と題されていて、よくまとまった内容になっていました。
ご覧になった方も多いと思いますが、そうでない方のために、番組の要点をまとめてご紹介してみようと思います。
このブログでも墓じまいについてたびたび取り上げてきました。そこで、時宜にぴったりな話題だとおもい、ここで取り上げることにしたものです。
無縁墓の増加
番組は総務省の調査結果からスタートしました。
9月13日に発表された総務省の調査は次のURLで確認できます。https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/hyouka_230913000167928.html
まずここでは、少子高齢化や都市部のへの引越しなどによって、地方の墓を管理する人が少なくなってきていることが報告されています。
墓が管理されないことで墓石が倒れたり、雑草の処理がなされていないところもあるために、災害時の危険や墓地の環境悪化につながりかねない、と憂慮されているとのことです。
無縁墓の問題は地方だけではない
実はこういったお墓の問題は、地方に限られるものではありません。
東京都豊島区の雑司ヶ谷霊園では園内に縁故者が不明な「無縁墓」が27区画存在しているそうです。
墓の周りには草木が生い茂り、「この墓所のご縁者様は、下記番号をお控えのうえ霊園事務所にお立ち寄りください」と縁故者に呼びかける看板が建てられています。
このような光景は雑司ヶ谷霊園に限らず、青山、谷中、染井などでも見られます。
私は谷中墓地をよく散歩するのですが、立て札があることは稀ですが、手入れさずに荒れ果てた墓がいくつもあります。
国内には、墓地・納骨堂は約88万4000ヶ所もあるそうですから、全国でも似たような状況になっているのではないでしょうか。
今回の調査で判明した「無縁墓」は氷山の一角であり、今後人口減少で墓を支える人が減り「無縁墓」はさらに増える、とシニア生活文化研究所の小谷みどり所長は述べていました。
その上で、総務省の発表した「公営墓地を運営する765市町村のうち58.2%で「無縁墓」(管理する縁故者がいない墓)が存在する」としていることに、疑問をていしています。
コメンテーターも言っていましたが、はたして「無縁墓」の存在が本当に58.2%にとどまっているのか、もっと多いのではないかということです。限界集落などが問題となっている地域が増えていることなどから、私もそういった疑念を抱きました。
また、管理費の滞納が238市町村で発生して、その総額が役4億4800万円にのぼっているとのことです。
無縁墓を解消する手立てはないのか?
管理されず荒れた状態の墓があると、まず管理者は墓の縁故者がいないかどうかを調査します。
確認できなかった場合には、縁故者などに1年以内に名乗り出るように官報に掲載します。
官報というのは難しく言うと「法令・条約・予算・告示・国会事項・人事・叙任などを,国が一般国民に知らせるために独立行政法人国立印刷局から発行する日刊機関紙」です。
官報は官庁から国民に何かを知らせるのが主目的ですが、何らかの法律効果を発生させるためにも使われます。
ただ、実際には官報がどんなものなのかを知らない人も多く、官報を読む人も限られますから、お役所も縁故者が実施に名乗り出てくるとは思っていないでしょう。
ともかく、官報に掲載されても当事者から申告がなければ、市町村長の許可で合葬墓などに遺骨を移すことが可能になり、「無縁墓」を整理することができるようになります。
実際に「無縁墓」解消のために遺骨の移動や墓石の撤去に着手した市町村は6.1%しかない、と総務省の調査では言っています。
なぜ、撤去が進まないのか
縁故者に名乗り出るように官報に掲載しても縁故者が現れなければ、市町村長が許可を出せるにも関わらず、なぜ、撤去が進まないのでしょうか。
札幌市の回答によると、実際には「無縁墓」の撤去費用の負担が大きい上に墓石の保管場所が確保できないからとのことです。
また、広島県呉市の担当者からは「撤去後の墓石の取り扱いは法律の規定がない」「撤去した場合に所有権を主張する縁故者から損害賠償請求を受ける可能性がある」といったことで、遺骨を移すこと自体、極めて慎重に判断せざるを得ないとしています。
こういった自治体の対応は全国の空き家問題と共通するとコメンテーターの浜田敬子さんがおっしゃっていましたが、まさにその通りだと思います。
民法の法格言に「権利の上に眠るものは保護するに値せず」というものがあります。自分の権利ばかり主張して、義務を果たしていないものは保護に値しないという意味です。
各自治体は訴えられることを恐れてとにかく消極的ですが、尻込みせずにもう少し積極的に動いても良いように思いますが、いかがでしょうか。
「無縁墓」が増えている理由
番組では「人々の生活スタイルが変化しているのに墓のあり方が変わっていない」ことをあげています。
街の人の声
山梨にある代々からの墓になかなか行けていない。遠くにある中で墓を引き継ぐのは自分には無理。
次男なので自分や妻が入る墓がない。墓を建てるには多額の金がかかるのでそれはできない
このような意見に、「ライフスタイルが変わったのに墓のあり方は変わらないままである。先祖代々の墓に対する考え方を変える必要がある」というのが番組の意見でした。
私も全く同感です。墓というもののあり方をじっくり考える時が来ているように思います。
一方で、「墓を引き継ぐ人がいない。なくしてしまう先祖に対して申し訳ない気持ちと、自分が亡くなった後の墓の世話がどうなるのかのはざまで悩んでいる。」(50代男性)という意見があります。
こういった意見は、墓じまいをすべきか、すべきでないのかを悩んでいる多くの人に共通する思いなのではないでしょうか。
墓じまい
こういった悩みの解決策として、お墓を整理して遺骨を新たな場所に移して供養する「墓じまい」をする人が増えている、と伝えていました。
街の声でも、
私の代で墓じまいをする。お参りしてくれるだけでいいので、子供がいる東京で合同の墓を自分で用意しようと思っている。
別の女性は
3年前に思い切って墓じまいして都内の納骨堂に移した。遠くて不便なお墓はもういらない
などの意見から、やはり墓じまいはこれからも増えていくことは、誰の目にも明らかだと思います。
墓じまいにかかる費用
では現在の墓じまいのトレンドはどうなっているのでしょうか。
まず、墓じまいにかかった費用ですが、以下のようになっています。
墓じまいにかかった費用
10万円未満 | 20.3% |
10万円〜30万円未満 | 33.9% |
30万円〜50万円未満 | 15.3% |
50万円〜100万円未満 | 20.3% |
100万円〜200万円未満 | 8.5% |
200万円以上 | 1.7% |
調査件数が少ないのが問題ですが、価格帯の傾向はこれでわかると思います。
10万円から50万円が金額の中心といえるのではないでしょうか。
墓じまいにまつわるトラブル
では墓じまいをするとして、何か問題になることはないのでしょうか。最も問題になりやすいのはお寺が管理する場所にお墓があり、先祖の代から檀家になっていた場合です。このような場合に、高額の離檀料を請求されるケースがあるというのです。
高額な離檀料の請求
ある80代の女性が国民生活センターに次のような相談をしています。
自宅から遠く、自分も入るつもりはないので墓じまいを寺に申し出たところ、300万円ほどの高額な離檀料を要求され困惑している。払えないと言うとローンを組めると言われた。
同じく70代の女性は
後継がいないため、お寺に離檀したいと相談すると過去帳に八人の名前が載っているので、700万円かかると言われた。不当に高いと思う。
いやはや驚きです。過去帳まで持ち出してくるんですか?今は江戸時代ですか。
このような場合に、はたしてこのような高額な離檀料を払わなくてはいけないのでしょうか。
「法律的に離檀料の支払い義務はありません。しかし墓じまいについてはあらかじめ相談してお礼をすることはマナーではないかと思う」と言うのが、先ほどのシニア文化研究所小谷みどり所長の意見でした。
つまり、離檀料に法的な拘束力はないが、マナーとして払うのが好ましい、ということです。この点については多くの法律家が同じ意見です。
また、このようなトラブルを避けるために、小谷みどり所長が良いアドバイスをしてくれています。
「お寺に墓じまいを報告する際に、通常の法要のお布施3回分程度の金額を先にお渡ししてしまう」というものでした。
墓じまい代行の活用
いずれにしても、墓じまいは決して簡単なものではありません。
では、墓じまいを考えているならやっておくべきことには何があるでしょうか。
まずすべきことは親族との話し合いです。「いずれ必ず直面する問題なので、事前に墓や遺骨をどうするか親族と話し合っておく必要がある」とのことです。
また、最近は墓じまい全般の手続きや交渉を代行してくれるサービスも登場しています。
行政上の手続きから、お寺との交渉、墓石の撤去の手配までやってくれます。自分でやるのは面倒だ、不安だという方は相談してみて、見積もりを取って検討するという手もありかと思います。
墓じまいの代行についての詳しいことはこちらをご覧ください↓
2023年9月25日の羽鳥慎一モーニングショーで再び「墓じまい」が取り上げられました。
2023年10月2日に羽鳥慎一モーニングショーが「仏壇じまい」「位牌じまい」「散骨」をとりあげました。
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墓じまい丸ごとおまかせ!お墓の撤去・離檀サポート・お寺とのトラブル【わたしたちの墓じまい】
墓じまい支援制度
墓じまいしたいが、お金がない。そんな、墓じまいの経済的問題に関しては、自治体が支援する制度を設けています。まだまだ数は少ないのですが、墓のある自治体に確認してみる価値はあると思います。
東京都では23区内の都営霊園(青山、谷中、染井、雑司ヶ谷)の墓を返還する場合、墓を更地にする撤去費を免除しています。昨年度までに1548件の利用がありました。
ただし、青山、谷中は受付を終了していますので、ご注意ください
また都営霊園の墓から合葬墓に移した場合の使用料を免除していて、昨年度には802件の利用があり、過去最多となっています。
さらに自治体の新たな取り組みとして、鹿児島市では墓じまいの件数が増加することから、合葬墓を建設し、来年2月からの受け入れを開始する予定です。
対象者は市営墓地所有者で墓じまいする人、または鹿児島市民で墓を持たない人になっています。
おそらく、このような取り組みは全国の自治体にも広まっていくのではないかと思いますが、早くそうなって欲しいものです。
増え続ける無縁遺骨
実は無縁墓の他にも自治体を悩ませている問題があります。それが無縁遺骨です。
全国の市区町村で管理・保管している引き取り手のない無縁遺骨が増加しているのです。
市区町村で現在管理・保管されている遺骨は5万9848柱で、3年で約1万4000柱増加しているそうです。
この約6万柱のうち身元不明は約6000柱に対して、身元が判明しているのが約5万4000柱もあるということが驚きです。
身元が判明していてもすでに縁者がいない、あるいは縁者が引き取りを拒否している。そういった状況なのでしょう。なんとも寂しい気持ちになります。もし、自分がそうなったら…..
少子化にともなって、独居老人も増加し続けています。子供がいない人も多く、いつ誰がそういった「無縁遺骨」という境涯に陥ってしまうかわかりません。
私たちは今、そういった社会に生きていることを強く自覚しなければならないと思います。
神奈川県横須賀市のエンディング・サポート事業
そんな中、神奈川県の横須賀市が「エンディングプラン・サポート事業」というものを始めています。
これは遺骨の引き取り手がいないと想定される人で、原則一人暮らしで身寄りがなく、所得が少ない高齢者に、市と提携している葬儀社と生前契約してもらうというものです。
横須賀市の資料によると万一の時、この支援プランによって葬儀納骨まで市と協力葬儀社が葬儀などを円滑に進めてくれます。
葬儀には市の職員が一人から二人参列して遺骨を収骨し、登録者が指定した寺へ納骨します。
また、生前市の職員が4から5ヶ月に一度自宅を訪問し、さらに毎月安否確認の電話をしてくれるます。
「無縁遺骨」が増加している理由について、横須賀市の福祉専門官は次のように述べています。
「1990年代に核家族化や少子化が進み、その後携帯電話が普及したことがダメ押しになった。昔は番号案内の104で「〇〇さん」をかたっぱしから電話して親族を探したが、今は固定電話が減り104登録も減ったので連絡がつかない」
横須賀市の「わたしの終活登録」制度
また横須賀市は「わたしの終活登録」といって、年齢制限なく全市民に対して無料のサービスを提供しています。
万一の時、病院・消防・警察・福祉事務所や、本人が指定した方に生前登録した「終活関連情報」を開示して、本人の意思の実現を支援するという事業です。
こういった住民サービスも今後ますます各地に広がっていって欲しいものです。
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